0人が本棚に入れています
本棚に追加
「鳥になりたいなら、願いを叶えてやろう」
幻聴だ。神様が本当にいるなんてありえない。だが声はなおも語りかけてくる。
「親から自由になりたいのだろう?」
泥に沈み込んだような今の生活と、大空を羽ばたく鳥。歩実は静かに目を瞑り、手を合わせた。目を開けたときには空を飛んでたりして。なんて、そんなわけないか。
そう思っていた。
だから、体が水に浸かっている感触に歩実は飛び上がった。それは文字通り、である。歩実は水面から飛び立ち、池のほとりに着地した。翼をたたんで振り返ると、子ガモたちが池から上がろうとしていた。
さっき見たときより随分と目線が下がっている。不思議に思って池を覗き込むと、母ガモが覗き返していた。
「……カルガモ?」
最初のコメントを投稿しよう!