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「そうじゃ、望み通り鳥にしてやったぞ。カルガモにな」
また姿なき声が聞こえる。本殿の方を向いて、歩実……だったカルガモは翼をバサバサはためかせた。
「あ、あんた誰!?本当に神様?姿くらい見せてよ!」
「そう、神じゃ。神に向かってなんて不遜な物言いじゃ。まったく、たまに望みを叶えてやるとこれだから、人間というやつは度し難い」
歩実は押し黙った。まずい。上から目線で話しかけてくるのについ反発してしまった。神様を怒らせたらどうなるか分からない。……いや落ち着け、本当に鳥になるわけがない。
「そっか、私、あの後寝落ちしちゃったんだ。夢でしょ、これ。うん、夢だ」
でも夢だとしたら、体に触れるこの柔らかな感触はなんだろう。歩実はいつの間にか、五羽の子ガモに密着されていた。
「温かいだろう。お主を母だと思っている」
歩実は子ガモたちから伝わるモフモフした感覚を現実のものだと認めるしかなかった。何となくお願いしてみたら本当に鳥になるとは思わなかった。しかもカルガモで、子どもまでいるなんて。
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