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「私、ちょっと空を飛べたらいいなって思っただけなのに」
「鳥になりたいかと訊ねたら、そうだと答えたではないか」
ここの神様は言葉尻を捉えてくるタイプらしい。どっかの母親にそっくりだと、歩実は心の中で毒づいた。
「いきなり親にされても困ります。早く元に戻してください」
「お主は賽銭を投げ入れなかったろう。だから無条件でもう一度願いを叶えることはできぬ」
「そんな!」
急に家を飛び出したから持ち合わせがなかったのである。けちな神様だと歩実は思った。
「その代わり、お主には試練を与える。達成できれば元に戻そう」
「試練って、何ですか」
「それはな……」
顔が見えないのに、きっと得意げで、にんまりと笑っていそうな声だと思いながら、歩実は耳を傾けた。
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