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野生の勘が多少は備わっているようだ。二人は争うように歩実たち目掛けて走ってきた。
「捕まえて持ち帰ろうぜ」
「あっ、先に見つけたのは俺だぞ」
この二人に動物愛護の精神はまだ育まれていないようだ。
あの神様、「道中見守っておるぞ」なんて言ってたくせに全然ダメじゃん。歩実は内心毒づいた。
子どもといえどカルガモから見れば巨人だ。無理だ、勝てっこない。今の私なら自由に飛べる。翼を広げようとしたとき、子ガモたちがぴいぴいと喚いた。「僕たち私たち、食べられちゃうの」と怯えているように聞こえる。
「ああもう、面倒くさい」
歩実は子ガモたちを自分の後ろに隠しながら、鳥頭に収まった人間の知恵をフル稼働させた。
小さな生き物はときに、自分の体を大きく見せることで天敵を撃退するという。カルガモにその能力があるか分からないけれど、今の中身は人間・鴨志田歩実だ。
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