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「まあ、話としてはこれまでなんですけど」
話し終えた諒子さんは、恥ずかしそうに紅茶を啜った。
「では、Y美さんの幽霊が出た、なんていうのも?」
「ええ。一切ありません。すみません、たいして怖くないお話で」
「いえいえ、そんなことは。生きた人の、常識外れの行動って、本当に怖いですよね」
「ほんと。わたし自身になるなんて、どうしたら思いつくんでしょう」
「思春期って、特に暴走しやすいと聞きますが――」
私は感想を述べながら、メモを取る振りをして、スマホを操作した。
こっそり、SNSのアプリを開く。
DMをやり取りした履歴。
そこに残る諒子さんのアカウント名は、”Y美”だった。
顔を上げた。目の前に座る諒子さん。彼女の口もとに恍惚とした歪みを見つけ、私はのど元まで出かかった疑問を飲み込んだ。
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