Ⅳ 大農場の村長

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「よーし! 行きましょう! トリニティーガーへ!」  そんなわけで、ヘドリー・モンマスは新天地随一の海賊の島に腰を据えると、心も新たにますます海賊稼業に励むこととなった。  また、グランダナールで得た莫大な富を使い、島に土地を買って農場も開くと、昔取った杵柄でその運営も副業で始める。  労働力は、例のグランダナール襲撃時に解放された後、なんとなくついて来てしまった原住民のもと奴隷達である。  さらに彼らはヘドリーの船に乗り込むこともあり、一味の兵力増強にも一役買うこととなった。 「農場経営で金も入るし、船員の確保にも事欠かねえ……村長(・・)のヤツ、うまいことやりやがったな」 「ああ。私掠免状も持ってるしな。おそらく村長(・・)も次世代の一角を担う、有力船長の一人にそのうちなるだろうよ」  もともと郷紳(ジェントリ)の出身であることや海賊間の調停に長けていること、また、彼の農場が小さな村のようにも見えることから、いつしかトリニティーガーの海賊達は、ヘドリーのことを〝村長〟という愛称で呼ぶようになる……。  こうして、〝村長〟こと私掠船長ヘドリー・モンマスは、新天地でも一目置かれる、トリニティーガー島を統べる大海賊の一人へと成長してゆくのだった……。  そして、さらにこの十数年の後、彼は他の有力船長達同様、魔導書を専門に狙う風変わりな海賊〝禁書の秘鍵(ひけん)団〟と関わりを持ったことで、図らずも世界の趨勢を巡る大戦(おおいくさ)へとその活躍の場を広げることとなるのであるが……それはまた、別の、お話(森本◯オ調)。 (El Alcalde 〜村長〜 了)
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