Ⅲ 集積地への大遠征

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「もうダメだーっ! みんな大聖堂へ逃げ込めーっ! 必ずや神がお守りくださるはずだぁーっ!」 「おお、神よ! どうか我らを守りたまえーっ!」  一転して多勢に無勢となった駐留軍の兵士や街の住民達は、小高い丘の上に建つプロフェシア教会の大聖堂へと立て籠り、その堅固な石造りの壁と神の威光によって、ヘドリー達襲撃者から身を守ろうとする。 「よし! ここまでだ! 我らの目的は殺戮ではない! 積めるだけのお宝を積んだら早々に撤収するぞ!」  邪魔者が大聖堂へと逃れ、街の中が空っぽになってしまうと、ヘドリーは声を張り上げてそう仲間達に号令をかける。  別にグランナダールの街を征服しに来たわけではないので、敵対する力さえ削げれば、それでもう充分なのだ。 「急げーっ! いつまた反撃してくるかわからんぞーっ!」 「積載量は限られてるんだ! なるべく金目のものを積み込めえっ! 特に銀だ! 銀!」  反撃が止んだ隙に、ヘドリー達はカヌーに掠奪した荷物をありったけ積み込み、早々にまたニカワカワ湖へと皆で漕ぎ出す……カヌーなので収穫はそれほど多くはなかったが、それでも彼らを満足させるのに有り余るほどのものであった。
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