王妃と画家

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 これでもかと着飾った国王にそんなことを思いながらもおくびにも出さず、セヴランは次の言葉を待った。  国王はまだしばらくセヴランをうたぐっていたようだが、やがて言った。 「おまえには、わが妃を描いてもらう。すぐにでも取りかかれるな?」        § § §  ゼリド二世は、つい最近結婚した。  相手は隣国の王女フロリルダ。  国王より十八歳年下の二十歳で、亜麻色の髪と菫色の瞳を持つ美女と聞いている。  だが、新妻の美貌をただ描かせたいだけなら、すでにいる他の宮廷画家に命じれば事足りる。 (それを、わざわざおれに頼んだということは――)  セヴランは注意深く、案内された部屋で王妃を待った。  まもなく鈴の音が聞こえ、奥の扉から女官をつれた王妃が入ってきた。  セヴランは如才なく礼をしながら、それと同時に芸術家の目で相手を見て取っていた。 (これはこれは)  噂以上の美女だった。  夕暮れどきの濃密な陽光を集めたかのような髪や、優美な顔立ちばかりではない。  しなやかな曲線を描いた姿態はなまめかしく、たくさんのひだが流れ落ちる彼女の祖国のドレスのせいもあって、幻想世界の精霊が間違って俗界に来てしまったかのようだった。  つぶらな瞳がセヴランを見た。
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