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万が一にもセヴランが王妃に不届きな真似をしようものなら、すぐさま彼らの剣が首を刎ねとばすに違いない。
セヴランの容姿は平凡なほうだ。
上品な印象の装いを心がけているが、と同時に貴婦人に近づけても安心な男と思われるように気をつけている。
それでも国王の疑念を晴らすには足りなかったらしい。
(われらが国王陛下は、この別嬪さんにすっかりまいっちまったようで)
だからこそ、素直で従順だがからっぽな王妃の表情に耐えられないと見える。
なんにしてもセヴランとしては、きっちり自分の仕事をして国王に気に入られて、宮廷画家の座を手に入れるだけだ。
「ただ座っているばかりでは王妃さまも退屈でございましょう。道化をお呼びしましょう」
宮廷道化たちに来てもらったが、彼らの軽口、寸劇、曲芸にも、王妃の表情は動かない。
笑ってはいけない衛兵たちと、笑ってもらえない道化たちが気の毒なほどだった。
セヴランは彼らに帰ってもらい、別の提案をしてみた。
「王妃さまは、小鳥や猫や抱き犬などは飼われていらっしゃいませんか? 一緒に描くこともできますが」
「何も飼ってはおりません。宮廷で飼われているものをつれてこさせますか?」
女官が答え、そしてやはり王妃は無表情だった。
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