王妃と画家

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 成果が見こめない努力などごめんだ。セヴランは丁重に提案をとりさげた。        § § §  しかし、成果をあげるには努力しないわけにはいかない。  次に王妃と会う日までに、セヴランはあらかじめ準備をしていった。  衛兵たちに見張られながら待つことしばし、鈴の音のあとに王妃が女官と現れた。 「王妃さま、まずはこちらを見ていただけますか。習作とも言えない程度のものですが」  いくつもの肖像画案を綴じたものを持って、うやうやしく王妃に差し出す。  王妃は受け取らず、女官が取った。そして王妃の横で見せはじめた様子は、まるで子供に読み聞かせをする乳母だった。  セヴランは真摯な画家らしい顔を作りながら、無表情に素描を眺める王妃の表情に注目した。 (真にからっぽのお人形なら、あそこまでからっぽな声は逆に出せんよ、王妃さま)  他の言いなりになるしか能のない生き人形でも、所有者への媚びとその期待を読み取ろうとする奸智くらいは見せるものだ。  しかし、この王妃にはそれすらない。  彼女は何も思わない女なのではなく、みずから何も思わないようにしている女なのではないかと、セヴランは判断した。
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