3 ラックの怒り

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 レイズンはラックからやっと解放されると、自身のベッドに疲れた体を潜り込ませた。  ラックは自分だけスッキリしたら、そのままイビキをかいて寝てしまった。   (あー……顎がいてえ。ラックのやつ、今日は力任せに喉の奥を突きやがって)    結局下手くそだなんだと文句を垂れながら、自分本位な動きでレイズンの喉奥を突き、オエッと吐きそうになっている涙でぐちょぐちょになったレイズンの口の中で果てたのだ。    いつものラックならここまではしない。だが自分が優位なのを見せつけるためか、たまにこういう無茶をする。  レイズンがオエッとなるたびに、喉が絞まるのが気持ちがいいそうだ。    しかし結局なんでラックが怒っていたのかは最後まで分からずじまい。ラックはラックで、レイズンが自分の言いなりになるのを見て満足し、勝手に納得して終わったようだった。   (俺、ラックを不安にさせるようなことしたかな……)    行為中何度も「俺のことを愛してるか」「好きなのは俺だけだよな」と聞いてくるラックに、口にペニスを入れたまま何度も繰り返し頷いた。   (やっぱり原因は俺なのか)    と考えてはみたが、思い当たることがない。   (誰かに何か吹き込まれたりしたのかなあ)    だとしたら合点がいく。それが何かは分からないが、誰かがラックを煽りでもしたのだろう。   (まったく、誰だよ。誰が後で機嫌をとると思ってんだ。いい迷惑だ)    ラックをそそのかした相手に腹を立てながらも、これだけ満足させたんだ、明日の朝は機嫌が直ってるだろう。そう思いながら、レイズンはまどろみに沈んだ。      翌日レイズンの予想通り、ラックの機嫌はすっかり直っていた。いつも通り朝起きるとおはようとキスをして、それから一緒に食堂へ朝食に行き、それぞれ仕事の持ち場へ向かった。武器庫のほうに去っていくラックの背中を見ながら、単純なやつで助かったなとレイズンは安堵し、今日の割り当てである畑のほうへ歩き始めた。       「なあ、レイズン。昨日ラック機嫌悪そうだったけど、お前大丈夫だったのか」 「おはようリヒター。なんでお前がラックの機嫌が悪いこと知ってんだ? あ! もしかしてラックの機嫌を損ねたのは、お前の相棒か!?」    リヒターのパートナーのレンは男爵家の次男で、ラックと肩を並べても遜色ない大柄な男だ。ラックとは相性が良いのか悪いのか、よくつっかかってはラックを怒らせ、喧嘩をしている。   「は? 違う違う! 昨日俺たちが部屋に戻ったら、レイズンたちの部屋から誰かが暴れるようなデカい物音がしたからさ。レイズンは俺よりも後に畑の作業を終えただろ? ラックが一人でかなり荒れてる感じだったから、あの後レイズン無事かなってレンと話してたんだ」    リヒターが慌てて首を振った。リヒターの話では、昨日ラックと同じく武器庫当番だったレンにも心あたりはないようだった。   「……てっきり武器庫の当番中に何かあったのかと思っていたんけど……違うのか」 「違うね。昼間は普通に働いてたってさ。レンが言っていた。最近真面目で穏やかになったってレンとも話してたのに。それでレイズンは大丈夫だったのか」    部屋からの騒音がよほどだったのだろう。心配するリヒターに、慰めるために散々口で奉仕させられたとはさすがに言えず、レイズンは「ははは大丈夫」と苦笑いでごまかした。    ともあれ、やはりレイズンの棚を暴れて壊したのはラックだと分かった。何かあって八つ当たりしたのだろうけど……   (何があったんだ? ラックのやつ)    レイズンはもやもやが残ったまま、鍬を手に仕事に取り掛かった。 
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