4 街に広がる人攫いの噂

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「なあ、レイズン。今日酒場にも行かずに我慢したんだから、褒美をくれよ」    ラックが甘える仕草で、報告書を書くレイズンの首を背後から抱きしめた。   「おい、まだ書いているんだからな。今日中に提出しないと小隊長殿に怒られるのは俺なんだぞ……ンンッ」    顔を無理矢理上に向かされ、唇を塞がれた。   「……なあ、ペンを置けよ」    唇を貪られながら、手に持っていたペンを机に置くよう手で誘導される。   「お、おい、ラック……」    無理矢理唇を解くと、目の前にはパンパンに前が張ったラックの腰があり、掴まれた手はその膨らみの上に置かれた。   「な、もう限界なんだよ」  レイズンが布ごしに触ると、ラックから熱い吐息が漏れ、緩やかに腰を揺すった。   「……んん」    上から覆うようにキスをしながら椅子から立たせると、机に手をつかせズボンを引きずり下ろす。   「あっ……ちょ、ちょっとラック、今ここでやるのか!?」 「ん? いいだろ。たまには立ってやるのも」 「え? いや、ちょ……あっ嫌だ! ああっ……くっ…………はあああっ」    軽く指でほぐすと、ラックはそのままグイッとペニスを押し込んだ。   「あー……お前の中はいいな。最高だ。愛してるぞレイズン」    ガンガンと腰を振られ、机がゴンゴンと音を立てて揺れる。   (あ……まずい。これ、隣に聞こえる)    声を出すと余計に隣が不審に思うだろう。この間みたいに喧嘩と思われて、声をかけに来るかもしれない。それはさすがに困る!  レイズンは必死で声を抑え、机にしがみつき耐えた。   「なあ、声出せよ。レイズン、気持ちいいんだろ?」   (出せるか!!)    と心の中で叫びながら、ラックが果てるまで耐え抜いた。 ◇     「……失礼します。小隊長殿。本日の報告書を持って参りました。遅くなり申し訳ありません」    もう夜も遅く執務室の電気も消えていたため、レイズンはハクラシスの私室へ出向き、ノックをした。  すぐに「入れ」という言葉がかかり、レイズンは扉を開けるとすかさず敬礼した。    「今日は遅かったな。お前で最後だ。それだけ何か成果があったということか?」    机に向かって書きつけをしていたハクラシスが振り返り、レイズンからの報告書を受け取ると、「ふん」と眉根を寄せた。   「今日のことはアレンからの報告でも聞いている。何か気になる点があるのか」 「貧民街の奥はあまり巡回されないと聞いています。裏通りは迷宮のようで、隠れるには最適な場所です。馬では入れない場所ですので、我々が回るならこのあたりを重点的にしたほうが良いのではと」 「……ふん、なるほどな。このことは騎兵のほうにも回しておく。だがあちらがここは巡回不要と決めたなら、お前たちも近づくな。いいか、お前たちは補佐だ。勝手な振る舞いは許さん。いいな」    ハクラシスは眉を片方だけ上げて、報告書越しに脅すような目でレイズンを見た。   「しかし」 「口答えは許さん。分かったな」 「……はい」 「分かったら行け」 「はっ」    レイズンは何も言えないまま、敬礼しハクラシスの部屋から退出した。        結局、警備隊からは貧民街周辺の巡回の許可は降りず、レイズンたちは巡回範囲を制限されてしまった。   「なんだよ。せっかく俺たちが情報を提供してやったのに」    小隊長からの通達を聞いたアレンが、小さい声でぶつぶつと文句を言うのが聞こえた。   「まあ仕方ないよ。俺たち主体で動けることではないからな」 「だが、怪しい場所があるのになぜ探さないんだ」    アレンが睨むように前を見つめた。視線の先には街を巡回する騎兵の姿があった。そんなアレンに加担するかのように、ラックが口を挟んだ。   「なあ、俺たちだけで調査しないか」 「ラック!?」    レイズンが驚いて声を上げた。しかしラックはしれっと前を向いている。   「レイズン、大きな声を出すなよ。少しずつ調査すれば気づかれないさ。何か証拠を掴めば騎兵なり小隊長なりに報告すればいいだろ? な、アレン」    ラックがアレンに目くばせすると、アレンが頷いた。   「俺も賛成だ。あれから気になって仕方がないんだ。あの女性が本当はどうなったのか。俺はそれが知りたい」    アレンは、女性が行方不明になった際に居合わせたことで、これまでになく義憤にかられているようだった。  確かに一度に奥に進まなければ、それほど心配ない。それに自分達は体を鍛えた騎士だ。4人いれば何かあっても何とかできるだろう。それが傲りであるとは、まだ若く騎士としての経験の浅い4人は気が付かなかった。  
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