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「なあ、レイズン。今日酒場にも行かずに我慢したんだから、褒美をくれよ」
ラックが甘える仕草で、報告書を書くレイズンの首を背後から抱きしめた。
「おい、まだ書いているんだからな。今日中に提出しないと小隊長殿に怒られるのは俺なんだぞ……ンンッ」
顔を無理矢理上に向かされ、唇を塞がれた。
「……なあ、ペンを置けよ」
唇を貪られながら、手に持っていたペンを机に置くよう手で誘導される。
「お、おい、ラック……」
無理矢理唇を解くと、目の前にはパンパンに前が張ったラックの腰があり、掴まれた手はその膨らみの上に置かれた。
「な、もう限界なんだよ」
レイズンが布ごしに触ると、ラックから熱い吐息が漏れ、緩やかに腰を揺すった。
「……んん」
上から覆うようにキスをしながら椅子から立たせると、机に手をつかせズボンを引きずり下ろす。
「あっ……ちょ、ちょっとラック、今ここでやるのか!?」
「ん? いいだろ。たまには立ってやるのも」
「え? いや、ちょ……あっ嫌だ! ああっ……くっ…………はあああっ」
軽く指でほぐすと、ラックはそのままグイッとペニスを押し込んだ。
「あー……お前の中はいいな。最高だ。愛してるぞレイズン」
ガンガンと腰を振られ、机がゴンゴンと音を立てて揺れる。
(あ……まずい。これ、隣に聞こえる)
声を出すと余計に隣が不審に思うだろう。この間みたいに喧嘩と思われて、声をかけに来るかもしれない。それはさすがに困る!
レイズンは必死で声を抑え、机にしがみつき耐えた。
「なあ、声出せよ。レイズン、気持ちいいんだろ?」
(出せるか!!)
と心の中で叫びながら、ラックが果てるまで耐え抜いた。
◇
「……失礼します。小隊長殿。本日の報告書を持って参りました。遅くなり申し訳ありません」
もう夜も遅く執務室の電気も消えていたため、レイズンはハクラシスの私室へ出向き、ノックをした。
すぐに「入れ」という言葉がかかり、レイズンは扉を開けるとすかさず敬礼した。
「今日は遅かったな。お前で最後だ。それだけ何か成果があったということか?」
机に向かって書きつけをしていたハクラシスが振り返り、レイズンからの報告書を受け取ると、「ふん」と眉根を寄せた。
「今日のことはアレンからの報告でも聞いている。何か気になる点があるのか」
「貧民街の奥はあまり巡回されないと聞いています。裏通りは迷宮のようで、隠れるには最適な場所です。馬では入れない場所ですので、我々が回るならこのあたりを重点的にしたほうが良いのではと」
「……ふん、なるほどな。このことは騎兵のほうにも回しておく。だがあちらがここは巡回不要と決めたなら、お前たちも近づくな。いいか、お前たちは補佐だ。勝手な振る舞いは許さん。いいな」
ハクラシスは眉を片方だけ上げて、報告書越しに脅すような目でレイズンを見た。
「しかし」
「口答えは許さん。分かったな」
「……はい」
「分かったら行け」
「はっ」
レイズンは何も言えないまま、敬礼しハクラシスの部屋から退出した。
結局、警備隊からは貧民街周辺の巡回の許可は降りず、レイズンたちは巡回範囲を制限されてしまった。
「なんだよ。せっかく俺たちが情報を提供してやったのに」
小隊長からの通達を聞いたアレンが、小さい声でぶつぶつと文句を言うのが聞こえた。
「まあ仕方ないよ。俺たち主体で動けることではないからな」
「だが、怪しい場所があるのになぜ探さないんだ」
アレンが睨むように前を見つめた。視線の先には街を巡回する騎兵の姿があった。そんなアレンに加担するかのように、ラックが口を挟んだ。
「なあ、俺たちだけで調査しないか」
「ラック!?」
レイズンが驚いて声を上げた。しかしラックはしれっと前を向いている。
「レイズン、大きな声を出すなよ。少しずつ調査すれば気づかれないさ。何か証拠を掴めば騎兵なり小隊長なりに報告すればいいだろ? な、アレン」
ラックがアレンに目くばせすると、アレンが頷いた。
「俺も賛成だ。あれから気になって仕方がないんだ。あの女性が本当はどうなったのか。俺はそれが知りたい」
アレンは、女性が行方不明になった際に居合わせたことで、これまでになく義憤にかられているようだった。
確かに一度に奥に進まなければ、それほど心配ない。それに自分達は体を鍛えた騎士だ。4人いれば何かあっても何とかできるだろう。それが傲りであるとは、まだ若く騎士としての経験の浅い4人は気が付かなかった。
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