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「レイズン、ちゃんとイケたか?」
固くしていた体から力が抜け、レイズンは大きく肩で息をしながらシーツに顔を埋め、こくこくと頷いた。
さっきイクとき力んだせいだろう。尻からはラックが放った白濁がどろりと流れ出てくるのをレイズンは感じた。このままだと尻や太ももがドロドロになる。
「なあ、ラック。中に出したやつ、処理してくんないか?」
「はあ? もう時間だぜ? シャワー浴びる時間なんてもうないぞ。拭うだけじゃだめなのか」
勝手に中出ししといてなんて言い草なんだと、レイズンは眉間にシワを寄せて拗ねた顔で睨んだ。
拭うだけだとあとでまた流れ出てしまい、下着を汚してしまう。それだけならいいが、演習中にズボンにまで染み出たら恥ずかしすぎる。
それにちゃんと掻き出さないと腹を壊してしまう。
「……じゃああとで合流するよ。小隊長殿には何か言い訳しといてくれ」
「了解。じゃあ俺は先に行くからな」
脱ぎ散らかした隊服を拾い上げ、ラックは急いで着替えると、レイズンをベッドに放置したまま出て行ってしまった。
「あいつ、最近ほんと勝手だな」
レイズンは起き上がる前にベッドサイドのミニテーブルに手を伸ばし、置いていた手巾を取って尻にあてた。
「あーくっそ、あいつ、今日出す量多くないか!?」
しっかり押さえても溢れ出てくるどろどろとした白濁のせいで、レイズンは部屋を移動できない。服を着ないとトイレにも行けないのに、尻から外すと流れ落ちてしまう。
「……しかたねーな、ここで処理すっかな」
レイズンは仕方なくベッドの上で前屈みの膝立ちになり、尻を突き出した。
自分では奥まで指が届かないから、なかなか全部は掻き出せない。
「あー早くしないと遅れたのがバレちまうな」
ドロドロといつまでも流れ出てくる白濁に苛立ちながら、焦りつつ自身の指を何度も出し入れているところに、ノックもせずに勢いよくバターンとドアが開いた。
「おい! レイズン、いつまで寝ているつもりだ!! この馬鹿者が!!」
「へ?」
「レイ…………」
「…………は」
(ハクラシス小隊長殿〜~~~!!!?)
レイズンは尻をドア側に向けていた。その自分の尻越しに、眉を吊り上げた鬼のようなハクラシス小隊長と目が合った。
上官に尻の穴から何もかもバッチリ見られてしまったのだ。
……おそらく午後の演習にも参加せず、ひとり尻での自慰に耽っているヤバいヤツだと思われただろう。
「…………何をしておるんだお前は」
あまりのことにレイズンはベッドに崩れ落ちた。なぜよりにもよって呼び出しに来たのが、トップである小隊長殿なのか。
(ラックのやつ、俺の遅刻にどんな言い訳しやがったんだ!?)
普通はパートナーであるラックが呼びに来るはずなのに、なぜに小隊長なのか。ラックでなくとも他にもレイズンを呼びに来れる者はいただろうに。
「しょ、……小隊長殿……。お見苦しいところを見せてしまい申し訳ありません」
ごそごそと体に白濁まみれのシーツを巻き付けながら、レイズンは顔を青くしてベッドの上で小隊長に向かって平伏した。
「……他の者はもう演習に出た。お前は前も遅れて来ただろう。なんのためのパートナー制だと思っているんだ! そのときも一人でこんなことをやっておったのか」
「滅相もございません!!」
しまったなとレイズンは思った。確かに少し前も今日と同じようなことがあり、レイズンは少し遅れて行ったのだ。まさかそれを小隊長が覚えていたとは。
レイズンは小隊長の顔色を窺うため、恐る恐る顔を上げた。
レイズンとラックが所属する小隊の長であるハクラシスは、白髪混じり髪を隙なく後ろに撫で付けた中年の男で、50も過ぎ、目の下にはたるみも目立つ。しかしくたびれた印象はなく、精悍でむしろ若々しい。だがそのギラギラと鋭い眼光を放つ瞳に睨まれれば、誰もが萎縮し、レイズンなどは思わず平伏してしまいそうになる。
……要は妙に威厳があり、顔が怖いのだ。
冗談は一切通じず、少しでもヘラヘラしようもんなら「何がおかしいか!」と一喝される始末。日々のしごきも半端なく、何度体に痣をこしらえたことか。ラックとレイズンにとっては鬼のように、いや鬼より恐ろしい相手であった。
(小隊長殿怒ってるな……そりゃそうか)
レイズンを見る小隊長の目は冷ややかだ。しかしその目には若干の困惑も窺える。
ラックはレイズンが昼寝していて寝坊したとでも伝えたのだろう。そんな腑抜けには一度活を入れてやろうと思って来てみれば、その腑抜けがまさか尻で自慰をしているなどとは思ってもみないだろう。
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