第1章 3

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「じゃあ今から、一人ずつ前に出て自己紹介をしてもらいます。皆、緊張するかもしれないけど、お互いを知る良い機会だから、頑張って!」    担任のその呼び掛けに、さらなる緊張が俺を襲う。額に汗が滲んでいくのがわかった。   「えー、緊張するよー!」と、高橋が後ろの友人に言ったが、その声は全然緊張しているようには聞こえなくて、むしろ楽しんでいるようにすら思えた。    右端の一番前から、クラスメイト達が順番に自己紹介をしていく。  教壇に一人で立ち、趣味や好きな食べ物、所属している部活などを言っていく。皆やはり緊張しているようで、顔が引き攣っている子や声が震えている子もいた。      やがて俺より先に、高橋の順番がやってきた。  高橋は照れを隠すためかにやにやしながら教壇へ向かうと、自信があるのか恥ずかしがっているのかよく分からない、しかし妙に落ち着いたテンポで話し始めた。  「えーっと、高橋美咲です!部活は、帰宅部です。得意な科目はー……ないです!!あははっ」  クラス中にくすくすとした笑いが起きる。  「苦手な科目は、体育です!趣味はー、カラオケとか。好きな食べ物はパンケーキです。あと、プリンも大好きです!よろしくお願いしまーす!」  バカ丸出しの自己紹介。  だが最後にニコっと上手に営業スマイルみたいなのをしていて、その綺麗な笑い方だけは俺にはどれだけ努力しても真似できないな、と思った。    皆がパチパチとお決まりの拍手をする。  高橋はせっせと席に戻ると、後ろの友人に「緊張した〜ははっ」とへらへらしながら言った。    左隣の俺には、二人の会話がよく聞こえる。
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