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関係って
「お茶、いる?」
縁側に座っていた俺のすぐ横に水色のマグカップが差し出され、続いて気怠げな声が耳に届く。
視線を向けた先には月明かりに照らされた友人の静流が、声と同じくらい怠そうな顔で立っていた。
栗色の髪が夜風に撫でられ色素の薄い茶色の瞳に影を落とす。
それだけで俺の心臓が揺らぎを見せた。
「……ありがとう」
愛用のマグカップを受け取って両手で包み込んだ。
あたたかい温度が手の中でじんわりと広がり、ほっと安心感を覚える。
そんな俺の隣に腰を下ろした静流の手には、色違いの同じマグカップが握られていた。
先程口づけを交わした唇がふぅっと吐息を吹きかけてカップから漂う湯気をかき消す。
「綾都は、物好きだよね」
「は?」
行為の最中に何度も呼ばれた自分の名前が、静流の口からまた音になって発せられた。
「だって、俺、別に綾都の恋人ってわけじゃないし。よく男なんて抱けるなぁと」
「それをお前が言うか」
「俺は気持ちいいからそれでいいけどさ」
「……そうかよ」
カップの縁に口をつけお茶を喉に少しずつ流し込む横顔を、月明かりが照らして美しく彩る。
黙っているとキレイなんだけどな。
俺、松谷綾都と隣に座る天城静流は、友人同士だ。
中学で仲良くなり高校を同じ場所に進学した。
ただの友人……と言いたいところだが、そう言う普通の関係ではない。
いや、途中までは普通の友達だったのだが、いつかの放課後に俺が何気なくこぼした「新しい彼女ほしいな」という一言から、何故かこういう関係になってしまった。
新しい、というのも、一応高校で二人ほど付き合った女子はいたのだが、何故かいつも別れを切り出されてしまうのだ。
そういう事情もあって絶賛いまはフリー状態である。
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