嫉妬

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「……っ、静流……!」  慌てて二人に近づくと力任せに細い腕を引っ張る。  それにびっくりした静流が目を見開いて俺のことを視界に映した。 「いたっ、ちょっと……綾都、痛い……」 「あ……ごめん……」  咄嗟の行動だったせいもあり力加減を忘れてしまって、痛みに顔をしかめた静流の表情で我に返る。  俺が手を離すとその場に居心地の悪い沈黙が流れる。  どうしたらいいのかもわからず、床に視線を落とした。 「えーっと、おれ邪魔? つか二人、喧嘩でもしたのかー?」  困惑しながらもへらっと笑顔を作り場を和ませようとする秋人に、我に返った静流が慌てて場を濁した。 「んーん。大丈夫。ほら、綾都も眉間にしわ寄せない!」  ピンっと指先で弾かれたことで余計に眉根を寄ってしまうが静流は気にした様子は全くなかった。  いつもの笑顔でいつものように笑いかけてくる。  それが、腹が立つ。  まるで、昨日のことなんてなかったかのような態度だ。  俺一人だけがバカみたいに悩んでいたのかと思うと胸の奥が痛みを覚える。  こいつにとって、本当にあの関係は終わった(・・・・)という扱いなのだろう。 「とりあえず、今日は秋人と食べたい気分だから、ちょっと行ってくるね?」  俺の顔を覗き込んでお伺いをたてるように上目遣いで見上げてくる静流に、どう答えたらいいかわからず俯いた。 「あと、放課後。話あるから、屋上で待ってて」  そう言い残すと、返事も待たずに待ちぼうけしている秋人の腕を引っ張って教室を出ていった。  その後ろ姿をただ黙って見送りながら、後を追いかけることもできずに立ち尽くす。  いや、追いかけようと思えば追いかけられた。  だけど、どんな言葉をかけたらいいのか分からなかった。
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