告白の手紙

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 けれど、授業中に歩き回ったりするようなことはなく、クラスに一人はいる少々手のかかる変わった子、という印象だった。  もちろん当時はASDと言うような発達障害の概念もないのだから、咎めようがない。  今は様々な研究が進み、そう言った生きづらさを感じている人の助けになっている。  私は単純にそう思っていたのだが、実はそうではないことを思い知らされた。  彼女は今までずっと『普通の人』として生きてきたのに、ある日突然ASDというレッテル(その言い方が正しいとは思わないが)を貼られてしまった。  加えて、過去に対する消すことのできない罪悪感まで植え付けられてしまったのだ。  私は、やり場のない感情を持て余し、大きく息をつく。  そして、何度も何度も、彼女からの手紙を読み返した。  その文面は、見れば見るほど泣き叫びたいのを必死に堪えているように見えた。  私は、事務机の抽斗から便せんとペンを取り出した。    一介の教員として、今こそ真正面から彼女と向き合わなければ。    散々悩んだ挙句、私はペンを走らせた。   ──拝復、この度は大変苦しい中どうもありがとうございました……              終 
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