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あの子も成長して、素敵な女性になっているだろうな。
成長した彼女を想像しつつ、私はハサミで封を切る。
丁寧に折りたたまれた便せんには、几帳面にびっしりと文字が書かれてていた。
──前略、大変ご無沙汰して申し訳ありません。
先生はあれからお変わりありませんか?
先生の事ですから、日々全力で生徒さんに向き合っておられることと思います。
さて、今回突然お便りしたのは、先生にお詫びしなければならないことがあるからです。……
そこまで読んで、はて、と私は首を傾げた。
彼女はどちらかといえばあまり徒党を組むタイプでは無く、他人をいじめるといった類の行動とは縁がない。
加えて成績は中の上くらいで、不正行為をする性格でもないし。
一体何事だろうか。
私は続きを読み進めた。
──十年前、私は母を病気で亡くしました。
それに前後して職場の異動もあり、私は心を病んでしまいました。
その時の見立では肉親の喪失に伴う鬱、とのことだったのですが、一向に良くなりませんでした。
処方される薬ばかり増え、更には親戚の相続争いも重なり、症状は悪化。
ついには自殺未遂を起こしてしまいました……
私は深々とため息をついた。
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