告白の手紙

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「先生、さようならー」   「はい、さようなら。気をつけて帰るのよ」    帰りの会を終えて、生徒たちは蜘蛛の子を散らすように教室から出ていく。  その最後の一人を見送って、私は教卓を降りた。  この私立の小学校に教員として勤めて三十五年。  教頭への昇格の話もあったけれど、私は一担任として日々生徒に向き合ってきた。  たくさんの教え子と出会えて、概ね幸せな教員生活を送れている、そう自負している。  定年までは、あと三年。  可能であれば三年か五年、契約を延長するつもりでいる。  それほど私はこの仕事が好きだし、天職だと思っている。  そんな事を考えながら、私は職員室に戻った。  室内の同僚と会釈を交わしつつ、自分の席に向かう。  と、机の上に一通の封書が置かれているのに気が付いた。  教材業者から送られてくるダイレクトメールの類ではなくて、花柄の清楚な封筒だった。    生徒の保護者からのクレームだろうか?    不安を覚えつつそれを手に取り、恐る恐る裏返して差出人を確認する。  その名前を見るなり、私は思わず微笑を浮かべた。  差出人は他でもなく、私が初めて担任を持ったクラスの生徒の一人だったのだ。
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