再会

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ドバイにあるミラクルガーデンという花の植物園の中で、彼と見た「アンブレラスカイ」という傘アートについて尋ねられた。アンブレラスカイは、空に浮かぶ傘のごとく、建物と建物の間にロープを張り巡らし、傘を吊るして空の景色に彩りを添えるアートだ。 私たちが見たのは、花のアーチの回廊にいくつもの傘をぶら下げ、傘の道で彩ったものだった。常に日差しの強いドバイということもあり、傘が日除けの代わりになって、その道を通る人々に避暑をもたらしていた。 私は学生時代にアンブレラスカイを作成したことがあり、アンブレラスカイについての知識があったのだが、それでも空に浮かぶ芸術に感動したのを覚えている。 「僕は雨のじめっとした空気があまり好きじゃないんです。だから、雨が降ると、あの日の照りつく陽気や花の香りを思い出して、少し気分を変える様にしています」 「暑いのが苦手な大青さんが思い出すなんて、相当じめじめはお嫌いなんですね」 クスッと笑う。 「それは言わないでください。しずくほど、若くはないんですから」 彼はそう苦笑いを浮かべる。彼は私とひと回りほど離れていた気がするけれど、大青さんは年齢不詳なところがある。それは人目を引く美しい顔だけでなく、よく鍛えられた身体も要因だ。 服の上からでもわかる筋肉質な彼の身体は彫刻のように研ぎ澄まされている。節張った長い指だけでも人を魅了するには充分な代物だ。そんなことを考えている間に、気づくと駅に着いてしまった。
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