再会

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再会

    『 TO (さかき) しずく  度胸、少しはついた?         ー 大青 ー』 相変わらず大青(たいせい)さんの返信は、短い。 「今回の大青さんの返信は、十文字か……」 日に日に文章が、短くなっている気もする。けど、まあいい。こうして私の気兼ねない日常を記したメールでも目を通してくれて、返信までくれているのだから。 大青さん()と出会ったのは5年前のこと。ドバイで研修中だった私はホテルのスイートに長期滞在するお客様の星野大青(ほしのたいせい)さんと出逢った。お客様とホテルの従業員という立場であったけれど、彼に惹かれ、研修が終わる日に彼に思いを告げた。あの時、彼の想いを聞くことは叶わなかったけれど、私は今も彼が好き。 そんな彼とは、今もメールでやり取りをする間柄を続けている。 ——先日、私が務めるホテルのイベントで、冬のウエディングフェアの時に撮影した写真を添付した。今、私は、お台場にあるアルコヴァレーノホテル・東京ベイリゾートに勤務している。 東京湾に面したホテルは、冠の通りにリゾート感をふんだんに醸し出したホテルだ。テーマパークや、観光スポットも多く、オフィス街もほど近い。そのためエグゼクティブ層だけでなく、家族連れから、ビジネスマンまで幅広い客層が利用している。そしてここは都心の中で非日常を提供するアーバンリゾートホテルらしく、スタッフの腕も施設も一流である。 大青さんと出会った5年前はまだ研修生で、周りのサポートがないとまともに動けないヒヨコだったけれど。少しはあの頃より成長したはず。それを彼に直接伝える術は、まだないのが残念だ。大青さんから貰ったメールの画面を指先で触れた。ゆっくりと画面を動かして、『大青』と、記された彼の名前をなぞってみる。 「好き……好きすぎる」 スマホを抱きしめて、ベッドの上でゴロゴロと体を揺らした。羽毛の掛け布団の間に頭を埋めて、彼に会いたい感情を表現した。
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