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みかんを食べすぎると手が黄色くなるという。本当かどうかは知らないが、
「いいもん!」
ユイは目の前に山と積まれたみかんをひとつひったくった。おばあちゃんがたくさん送ってくれた。清見という品種らしく、ジューシーで甘いが外皮が硬い。ナイフで切り込みを入れてオレンジ色の皮を引きちぎり、出てきた内袋を次々口に放り込む。
――何個あるのかな。
昨日、数えながら二人で面白がってリビングのテーブルに積み上げた。みかんたちが組体操を繰り広げたかに、立派なみかんピラミッドが完成している。
「みかんジェンガはムリだったけど」
ふたつめ、みっつめ、手も口も休めることなく、ぱくぱくぱくぱく、見る間にピラミッドは一段低くなった。頬張った果実から一斉に口の中に果汁が広がる。
「みかんみたい」
すっごく甘い。
七つ上のコウちゃんに、まさかの告白されて。
たまに酸っぱい。
コウちゃんが同僚のキレイな女の人と歩いてたのがめっちゃお似合いで。
せめてコドモ扱いされないように。コウちゃんを信じてやたらヤキモチやかない、って何度も自分に言い聞かせて。就職決まったお祝いしてくれたときに指輪が差し出された。シンプルに一言、
――結婚しよう。
嬉しくて涙が止まらなかった。
「どうして」
口の中に残った薄皮が苦い。
またオレンジの山に手を伸ばす。
「みかんに染まったっていいもん!いっそみかんになるもん」
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