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翌日。
憂鬱な気分に包まれつつ俺は登校する。
朝、横山は即行で俺のとこへ来た。
「おっはよー、にゃんた。昨日はゴメンねー」
「…………いや」
いつも通りの横山に、怒りと安堵どちらも抱くが、俺は努めて冷静に返事をした。いつものごとく横山にアイアンクローをかましてやってもよかったが、まぁ今日は勘弁しておいた。
仕事に疲れたサラリーマンのような雰囲気を漂わせる俺に、良くも悪くも無神経な横山は訊く。
「にゃんた、好きな子いるなら早く言ってよー。で、誰誰? その子。私の知ってる子⁇」
「言ったら俺を巻き込まないか?」
「巻き込む?…………あー、昨日の話? 実はあの後福ちゃんが来て、めっちゃくちゃ怒られてさー。
そういうわけで私、ラッキースケベマスターの夢は諦めました!」
「…………」
「それよか早く教えてよー! にゃんたの好きな人って──」
このとき、俺の中からブチッとなにかが千切れる音を、俺は確かに聞いた。
ガッと机を掴んで俺は怒鳴る。
「うおおっ、お前らマジでいらん遠回りしてないで、さっさとスケベしちまえってんだーーっ‼︎」
机を持ち上げ、降り注ぐ教科書をもろともせずに全力でキレた俺に、横山が目を丸くしながら叫ぶ。
「どわー! にゃんたが教室の中心でスケベを叫んだー‼︎」
存分にキレ散らかし、好きな子の前で思い切り醜態を晒したと気付いた俺は、このあと激しく後悔することになるのだった。
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