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彼の部屋は質素だった。
家具があるわけでも、趣味のものがあるわけでも無い。
だから、彼の部屋兼ベッドルームとなっているわけなのだが。
クローゼットを開けても、彼のスーツやコートくらいしかない。
タンスにも、古びたシャツやズボンばかり。
…あぁ。
懐かしい匂い。
彼に抱きついた時の
ふわっと香るこの匂いが好きだった。
甘いとか良い匂いとはちょっと違う。
でも
何故か落ち着く温かさがある。
この匂いを知っているのが私で良かった。
この匂いを感じられるのが私だけで良かった。
…
タンスを閉め、クローゼットを閉める。
ベッドに腰掛け、スマホのホームボタンを押す。
"ハートが回復したよ!
今すぐ◯◯で遊…"
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