非コンビニ人間

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非コンビニ人間

とある大学の近くのコンビニのトイレには張り紙がしてある。 【トイレのみのご利用はご遠慮ください】 つまり、トイレだけ使って何も買わずにそそくさと出て行くなよ、といってる訳だ。 たしかに近くに大学もあってトイレだけ使う(やから)が多いので、という事かも知れないが、この張り紙は自分が原因なのではないかという一抹の疑念がある。 というのも、タクシー運転手である私は夜などによくこのあたりを通る時にコンビニのトイレを拝借する場合が多いのだが、何も買わずに出て行くことがままあったからだ。 しかしながら其れには訳がある。 というのも、前に勤めていた会社の人に「コンビニでトイレを借りて出てくるなんて常識がない」みたいな事を言われたからだ。 その時は、何だよ常識って? と反発したり「常識に縛られない人間なんで」と(うそぶ)いたりしていたのだが、まぁ、時間が経つにつれそれもそうかと思う様になった。 つまり今はコンビニでトイレを借りれば余程混雑していて待ってられないとか仕事が間に合わないと言うことがない限り買う様にしている。 ではなぜ、例のコンビニでは買わずに出てくるのか? 要は買うことがそこにいる人々の為になってないと感じるから、だ。 そこにいる人々とは夜のバイトの学生達である。 夜のコンビニというのは昼間より暇であるという前提があるのか、色々とやることが多い様でカウンターにべったり誰かが張り付いてるという事があまりない様に見える。 そこで、お客が来るとまずチラリと一瞥して「いらっしゃいませー」と言うのだが、この声が既に歓迎されてない。 そうして、優柔不断よろしく店内を物色してから(おもむろ)にお会計をしようとレジに近づくと、いかにも面倒くさいという顔をしながらやって来て、面倒くさそうに「あーしたー」(ありがとうございましたと言ってるつもりかも知れないがこう聴こえる)と言われてもよしこれでギブアンドテイク完了とはならない。 彼らにとっては客は深夜の仕事の手を止めざる終えない邪魔でしかないのかも知れない。 だとしたらトイレを借りて汚した挙げ句に仕事の邪魔をしてる事になる。 そりゃ申し訳ないので、トイレを借りて、出来るだけ元の通りにして、何事もなかったかの様に出ていく。 これが、彼ら(夜のバイト)に対する配慮と言える訳だ。 が、しかし、なぜだかトイレを借りて何も買わない、ってところだけ噂が独り歩きしてこんな注意書きが出来てしまったのではないか? と想像してしまう。 だったらその夜のコンビニの店員の様子を録画して店長にでも見せようかと思ったが、今は結構まともになってるので誰かがチクったのかも知れない。 ところで、このコンビニの店員は「あしたー」などと言ってけしからん!と思った方もいるやも知れませんが、まぁ、言うだけまだマシで、無言でレジを去るという強者が居ましたよ! その話はまた今度。
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