イレギュラー

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「あーした!」  部活終了。大きな声で挨拶すると、俺は片付けを開始した。  一年生の頃、片付けは全て一年生の仕事だった。それが二年生の時に全員で行うようにとルールが変更になった。だから、三年になっても、片付けに参加している。それは仕方ないけど。 「お先」  レギュラーのメンバーが通り過ぎていく。  レギュラーは練習がきついからという理由で、いつのまにか、片付けや準備を免除されるようになった。  レギュラーになれない部員は大勢いる。俺だけじゃないと思っていても。 「監督、今日、教えて頂いたところで少しお聞きしたいんですが」  一年の冴島が木下監督に引っ付いている。  まただ。この姿にどうしてもイライラしてしまう。  そんなことをするから、ゴマスリでレギュラーを勝ち取ったって言われるんだよ。ピッチャーなんだから、堂々としろよ。  正直言うと、ニ番手ピッチャーには自分が選ばれると思っていた。  エースの川上は左の本格派、自分は右の技巧派、バランスも取れていると思っていた。  それが監督の選んだのは冴島だった。左の技巧派だ。同じタイプなのに、実力も同じくらいなのに、なぜ俺じゃないんだ。  理由はわかってる。  監督は来年度のことも考えているのだ。名門校として、甲子園出場は切らしたくないのに、二年生のピッチャーは鈴木しかいない。その上、エースというには少し頼りない。だから、一年生の冴島に経験を積ませたいんだ。  三年で卒業する俺たちとずっと学校にいる監督では時間の感覚が違うから仕方ない。  思わず、ため息が出てしまった。
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