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ヨータが公園にいくと、やっぱり、そこには男の子がいる。
手を泥だらけにして、砂のお城を作っているらしい。
まるでこの前のぼくみたいだ、とヨータは思う。
「今日もはりきってるねぇ」とヨータは男の子に声をかける。
「今日こそはでっかいお城を建てようと思ってさー」
男の子はおでこの汗の粒を拭いながら、せっせとお城を建てる。
汚れた手であちこり触るもんだから、もう顔が泥だらけだ。
そのことにはもちろん、気づいていない。
内緒にしておこう、とヨータは心に決めてお城作りに参加する。
男の子は一切の迷いもなく、お城を建て続ける。
スコップで砂をたくさん集めて、バケツに水を汲んできて、砂を固める。
まず最初に形になったのは、一階部分。
次に、二階が出来て屋根が出来る。
お城にしてはちょっと小さめなんだね、とヨータは言う。
そうなんだ。でも、ボクにとったら立派なお城なのさ、と男の子は言う。
そして次にお城の周りに大きな庭が出来る。そこに置かれる、棒状のなにか。
完成したお城は、ぼくの家にそっくりだった。
「すごい! すごいよ! ぼくの家だ」とヨータははしゃいで、男の子に言う。
「わかってもらえてよかったぁ」
「砂でぼくの家を作っちゃうなんて、考えもしなかったなぁ」
「そんなに褒めてもらえると、照れちゃうなぁ」と言いながら、男の子は自分の鼻頭を触る。
「でもさ、ぼくの家はお城じゃないよ。お城っていうのはもっと、もっと大きくて、夢みたいになんでもあるところなんだ」
「うーん、でもボクにとって、ヨータの家はやっぱりお城なんだもん」
そういうものかぁ、とヨータは思う。
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