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男の子は太陽が遠くの山の後ろに隠れてしまったときにようやく帰ってきた。
頬を真っ赤に染めながら駆け足でこっちに向かってくる。
ごめん! 遅くなっちゃった、と男の子は言う。
ヨータは全然大丈夫さ、と言ってから、誰かにバレなかったか訊いた。
「バレなかったよ! みんなボクのことをキミだと思ってた!」
「お父さんも?」
「もちろん!」
いたずらは大成功。
でもヨータの心のもやもやは晴れない。
「あーでも、ヨータのお父さん、今日のテストの点数を褒めてくれたんだ。ボクは何もしてないのにさ。……ごめんね」
「そんなのことはいいよ。今度また良い点を取って褒めて貰うことにするさ」とぼくは言う。
「そっかー。ヨータは頭がいいんだね」
「そうでもないよ。きっとキミも僕とおんなじ点数を取れるはずさ。ぼくたちはすごく似てるんだから」
「そうだといいなぁ」
「きっとそうだよ」
でも、家に帰ったらもう一回だけ、今日のテストをお父さんに見せてみよう、とヨータは思う。
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