はじめてのキスは、レモンの味じゃなくてお酒の味だった。

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はじめてのキスは、レモンの味じゃなくてお酒の味だった。 大学のサークルですこし飲みすぎたらしくて、よく面倒をみてくれる先輩に介抱され先輩は私の家の住所を知らなかったけど聞いてもろれつの回らない返答しかかえってこなくて仕方なく先輩の家まで運んでくれたらしい。 それから先のことは、おぼえていない。 先輩に聞いても、はぐらかされるだけだから聞いてもむだだと悟った。 だけど、くちびるの感触はわずかに残っていてお酒のほろにがい味が、まだ、くちのなかに残っていたのだった。 そして、なぜか腰が痛くてからだがやけに気だるく感じる。 あーあ、はじめてのキスは、レモンの味だって少女漫画には載ってたのになあ、なんておもいながらはじめてきた先輩のへやを見渡す。 床に落ちてるコーラにポテチの亡骸に、脱いでそのままになった服の抜け殻。 意外と散らかってるんだなあ、なんておもいながら先輩のへやを観察する。 煙草の灰皿と散らかされた缶チューハイの亡骸、そして何かの薬に避妊具やティッシュ。 ─ああ、そういうこと。 やさしいひとだとおもってたのに。 ちょっとした仕返しの意味もかねて、わざと先輩の家に私の愛用しているジル・スチュアートの口紅を置いていった。 これをみるたびに先輩の脳裏には、私との口づけを思い出させたいから。 こんなかたちではじめてを失いたくなかったの、わかってよ。 だから、せめてもの復讐くらいゆるしてよ。 先輩の連絡先を消して、サークルもやめた。 それから先のことは、もうわすれた。
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