肉うどんの拘り

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 問題は俺だ。  羽純は別れ際に言っていた。 「私、肉うどんってあんまり好きじゃないかも。だから、肉うどん食べてって言われるの辛いの。ごめんね」  ならばなぜあの時、俺の目の前で肉うどんを食べたんだ。  あんな蠱惑的な食べ方を見せられて、心奪われない男なんているのだろうか。  なのに、肉うどんが嫌いだったなんて。  そして、それが原因で別れ話にまでなるなんて。  本当に罪な(ひと)だ。  そのおかげで、俺はあの日から一歩も前に進めていない。  先に進みたい。  肉うどんへの拘りなどない男になりたい。普通に恋人と食事を楽しめる男になりたい。 「カウンセラーにでも見て貰えよ」  見かねた友人がそう勧めてくれた。  カウンセラー。あまり縁のない存在だが、今は藁にでも縋りたいのだ。俺は、友人に勧められるままにカウンセラーに電話してアポを取った。
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