右大臣邸にて、誤解、頭中将が姦計を巡らすこと、ごちそう

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右大臣邸にて、誤解、頭中将が姦計を巡らすこと、ごちそう

 結局来てしまった・・・ (どうしてこうなったの)  断っても強引に車に乗せられ、頭中将に手を掴まれて、ぐいぐいと輿(こし)に押し込められた。美香子はそれでも抗ったが、気がついたら車は動き出していた。 「あの」 「いいですから、私の家へ行けば、何でもあります。あなたの見づくろいから、身の回りのものまで、綺麗なものを用意してさしあげましょう」  車内の膝と膝をくっつけ合う身近さで、髪を撫でられたら、もう何も言えなくなった。  夜が深く、辿り着いた場所はくらくて全容は見えなかったけど、大きな檜葺(ひのきぶ)きの建物が見え、切妻の屋根をのせた幅広の門が待ち構え、立派な土の塀が巡り、かなり大きなお屋敷だった。がたごとと車で入っていくと、中は相当に広い。  高級そうな女房にかしずかれて、部屋に通されると、そこは家具、しつらえとも見事に整っている。 「大したことがない我が家だが」 「十分すごいです」 「まあくつろいでくれたまえ。疲れただろう。こちらにおいで」 「あ、あの」  拒否してもどんどん部屋の中に手を引いて通され、綺麗に整えられた畳の上まで座らされた。 「ああ、そうだ。着替えもなく連れて来てしまったのは、申し訳なかったね。おい、少将、彼女らをくつろげるようにしてくれ」  男は近くにいた女房に命じて、美香子の着替えまで用意させた。 (みすぼらしいなりっての、気づかれた?)  旅の衣装みたいな野良仕事着は、彼にどう思われたかは分からない。  美香子はそこまで用意してもらうのは恥ずかしく思ったが、家に来てしまった以上は、断ることも出来ない。 「まあ、立派な家ですわね、姫様、それに、この甘酒、ほんと、美味しいですわねえ」 「ほんとね、何でもあると聞く右大臣家だけど、何でも揃っているわね。我が家となんて違うのかしら」  着替えが済むと、美香子はきっちりと形が整った高麗縁がついた畳の上で、夕餉をおいしくいただき、その後、温かい飲み物まで出されて、ひといき落ち着いた。  木目が見事に出た床や柱、高価そうな足がついた几帳、蒔絵がされた厨子棚(ずしだな)は漆の色が濃くて艶光している。 (なんて良い暮らしをしているのだろう)
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