二人の結婚の日

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 かたん・・・  受領が来るのか来ないのかばかり、考えていたからだろうか。   何か来た。 (何かって、何?)  何度目、寝返りを打った頃だろう。戸のほうで、物音がした。  まだ夜は開けておらず、闇が深く、月明かりの光りが蔀戸の下から漏れていた。闇の気配に、どきっと心臓が鳴った。  と、ぎいっと妻戸が開いて、何者かが入って来た。冠と着物から男と分かる。 「きゃ・・・」  美香子は恐怖した。ちょうど今夜のどたばたで、防備の用意もない。  頭中将だろうか?受領の結婚が終わったら、私たちのことも進めよう。そう言っていたことを、美香子は思い出した。そこまで早めるとは思ってなかったけど、今来たのだろうか。あの頭中将なら、あり得ることだ。 「しっ」  何者かは口に指を当て、静かにするように指示する。  美香子は起きて、壁の際まで後ずさりした。 「おやめください、頭中将殿。そんなことをしたら、私は・・・」 「頭中将?」  と、その男は蔀の戸を明け、月明かりを入れた。足元からぼんやりと薄暗い闇の中に立った男を見たら、それは受領だった。 「源殿?」 「はい、私です」  訳が分からず、美香子は呆然としている前で、受領は燭台の明かりを一つ点けた。室内が明るくなって、受領の顔も見えた。見ると、微笑んでいる。 (え?)  これは夢?  まだ夢の中なのだろうか?
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