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それから一月ほどして、親戚の一家が、僕の家に住むことになった。
軽い知的障害をもっている。夫婦も子どもたち二人も、そうだった。
嫌だな! お父さんの弟一家だけれど、心のつながる相手ではない。
母の箪笥を開けて、着物を引っ張りだして、
お姫さまごっこをしたり、お父さんと一緒に
育てた花を、むしったり。
その度に [ やめろ! ] と、僕は怒鳴った。
お隣のおばさんが来て下さった。着物を畳んで下さった。
[ 帰って頂いたらどう? ]
[ 僕も、そう思っています。嫌で嫌で仕方がないんです。]
ある日も、兄妹でお姫さまごっこをしていた。母の着物を引っ張りだして。
[ やめろ! ] と、母の着物を取りあげた時。ポットの湯を背中にかけられた。おやじに。
弟の健二が、とっさに庇ったけれど、背中がヒリヒリする。健二が氷を持って来た。
[ 健一、病院に行こう。僕はぬるま湯だったから、平気だよ。]
健二は、救急車を呼んだ。救急車の方々は
僕のシャツを脱がせて、消毒をして下さった。
病院に着くと、僕は点滴を受けて、うつ伏せで過ごすことになった。
健二は、F先生に連絡をして、来て頂いた。
瑠璃には、なにも言わなかった。
でもなぜか、瑠璃はその日のうちに、来てくれた。
[ お姉ちゃんから、連絡があったの。]
[ 瑠璃ちゃん。]
まさに、地獄にキリストだった。
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