Mayからの手紙

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六月になった。継母は、見事にドレスを縫い上げた。 もう籍は、入っている。 隆一は、結婚指環を外して、警視庁に出向く。 「 拳銃や、柔道、剣道の稽古があるからね。心配しないで 」 そう言って出かける。帰って、手洗い、うがいをすると、結婚指環を嵌める。 「 そろそろ、結婚式だね 」 隆一は、楽しそうに言う。 私は、楽しくない。Mayが天に召されてから、もぬけの殻だ。 “ 喪失感ですね。時が、解決します ” 心療内科の先生は、そう仰った。 “ なるべく、明るく振る舞ってください。 ご主人と、ご自分のために。無理のない 範囲で、構いません。姿勢に気をつけて 猫背でいると、気分が暗くなります ” 単純な成分の、安定剤を頂いた。 鬱の人ほど、明るく振る舞っているとも 先生は、仰った。 大きな声で 「 May~ 」 と、叫びたかった。 青い空に向かって、叫びたかった。 「 Mayの馬鹿、Mayの馬鹿、私より先に イエス様のところに行くなんて 」 泣きながら歩いていると、隆一が車で 帰ってきた。
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