43人が本棚に入れています
本棚に追加
一週間経っても、私の食欲は旺盛だった。
「 瑠璃ちゃん、もしかしたら、赤ちゃんができたんじゃあないか? 僕の母も、妹がお腹の中にいると知らないうちは、凄い食欲だったよ。
それから、つわりが来て、大変だったんだ。後で、妊娠検査薬を買ってくる。
僕、毎晩五回は、発射しているから 」
妊娠検査薬で調べると、ハートのマークが、くっきり出た。
「 瑠璃ちゃん、瑠璃ちゃん、赤ちゃんだよ! 嬉しいな~ 結婚式まで、つわりが来なければいいな 」
結婚式は、なぜか予約がいっぱいだった。予約は、すでにしてあるけれど。
その日は、隆一の休みの日だった。
「 瑠璃ちゃん、産婦人科に行こう。きっと
双子だよ。そして、区役所で、母子手帳
を、発行して貰おう 」
隆一は、とても喜んでいる。
まるで、小さな子が、ほしかった玩具を
やっと買って貰えたときのように。
「 あ~双子ちゃんですね。二卵性の。たぶん、男の子と女の子でしょう。
おめでとうございます 」
「 ありがとうございます 」
隆一は、泣きながら言った。
「 ただ、奥さまは、体が小さいですから、小さい、小さい、赤ちゃんでしょう。
三十八週で、産まれれば、なにも心配は
ありません。まだ、高校生みたいな奥さま、お腹が張ったときは、横になってください。
健やかに、産まれて、健やかに育ってほしいんです 」
ドクターは、優しい。四十歳くらいに見える。しかも、イケメンだ。
「 はい、宜しくお願いいたします 」
「 あのう、ふたりで眠れる部屋はありますか? なるべくふたりでいたいんです 」
「 あります。今から予約を入れておきましょう。ご心配なく。健診は、二週間に一度
来てください。
双子ちゃんですから 」
産婦人科は、遠くない。ドクターが二人いる。綺麗な医院だ。
両親に知らせると、とても喜んでいた。
「 瑠璃ちゃん、無理をしたら駄目だよ。僕は、なんでもするからね 」
母子手帳は、二冊発行された。
双子だからだ。
私は、心の中で笑った。
Mayと結婚して、双子を産むと思っていたのに。
隆一の赤ちゃんだった。隆一は、心の底から喜んでいる。
隆一の喜びが伝わってきた。
嬉しくて涙があふれた。
私は、嬉しいと思う余裕がなかった。
最初のコメントを投稿しよう!