新しい命

2/19
前へ
/554ページ
次へ
一週間経っても、私の食欲は旺盛だった。 「 瑠璃ちゃん、もしかしたら、赤ちゃんができたんじゃあないか? 僕の母も、妹がお腹の中にいると知らないうちは、凄い食欲だったよ。 それから、つわりが来て、大変だったんだ。後で、妊娠検査薬を買ってくる。 僕、毎晩五回は、発射しているから 」 妊娠検査薬で調べると、ハートのマークが、くっきり出た。 「 瑠璃ちゃん、瑠璃ちゃん、赤ちゃんだよ! 嬉しいな~ 結婚式まで、つわりが来なければいいな 」 結婚式は、なぜか予約がいっぱいだった。予約は、すでにしてあるけれど。 その日は、隆一の休みの日だった。 「 瑠璃ちゃん、産婦人科に行こう。きっと 双子だよ。そして、区役所で、母子手帳 を、発行して貰おう 」 隆一は、とても喜んでいる。 まるで、小さな子が、ほしかった玩具を やっと買って貰えたときのように。 「 あ~双子ちゃんですね。二卵性の。たぶん、男の子と女の子でしょう。 おめでとうございます 」 「 ありがとうございます 」 隆一は、泣きながら言った。 「 ただ、奥さまは、体が小さいですから、小さい、小さい、赤ちゃんでしょう。 三十八週で、産まれれば、なにも心配は ありません。まだ、高校生みたいな奥さま、お腹が張ったときは、横になってください。 健やかに、産まれて、健やかに育ってほしいんです 」 ドクターは、優しい。四十歳くらいに見える。しかも、イケメンだ。 「 はい、宜しくお願いいたします 」 「 あのう、ふたりで眠れる部屋はありますか? なるべくふたりでいたいんです 」 「 あります。今から予約を入れておきましょう。ご心配なく。健診は、二週間に一度 来てください。 双子ちゃんですから 」 産婦人科は、遠くない。ドクターが二人いる。綺麗な医院だ。 両親に知らせると、とても喜んでいた。 「 瑠璃ちゃん、無理をしたら駄目だよ。僕は、なんでもするからね 」 母子手帳は、二冊発行された。 双子だからだ。 私は、心の中で笑った。 Mayと結婚して、双子を産むと思っていたのに。 隆一の赤ちゃんだった。隆一は、心の底から喜んでいる。 隆一の喜びが伝わってきた。 嬉しくて涙があふれた。 私は、嬉しいと思う余裕がなかった。
/554ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加