ホワイトムスクの夜明け前

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上杉さんはクスリと笑い、 「今は共働きの方が多いですから、奥様も時間が無いんです。だから手っ取り早く出来るトーストとかになってしまうんですね。それにサラダとウインナー、目玉焼きなんかが付いているなら、それは立派なモンですよ。テーブルの上にロールパンが置いてあるだけの家も多いんじゃないですかね…」 確かにそうかもしれない。 共働きの家が増えた事で、日本の朝食も手の掛かる和食から洋食へと変化して行ったと何かの本で読んだ事がある。 食事の準備に掛ける時間を効率的に短縮して行くのも日本の経済状況の現れなのかもしれない。 「サザエさんの家の朝食なんて、もう都市伝説化してますよ」 上杉さんは塩鮭を口に入れて微笑む。 確かにそうかもしれない。 朝一番に牛丼屋で朝食を取るサラリーマンも皆が独身かと言われると違う気がする。 私は上杉さんが作ってくれた和の朝食を朝から食べる事で出来ている。 これは私一人なら天地がひっくり返ろうとも無理な話だ。 私は幸せな人の分類に入るのかもしれない。
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