ちかづくな。

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ちかづくな。

 これ、半分備忘録みたいな気持ちで書き込んでる。そのうち忘れてしまいそうで怖いから。  これは俺が子供の頃に体験した、ある恐ろしい話。――怖い話なら忘れた方がいいって思うだろ?でも、これは絶対に忘れちゃ駄目なやつなんだ。どういう意味なのかは、最後まで話を聞いてもらえればわかると思う。  北海道のとある小さな町。それが、俺とチハルちゃんの故郷だった。チハルちゃんは幼馴染の女の子で、俺より一つ年下なのに俺よりずっと勇敢で冒険心のある女の子だったと言っておく。  小学生の頃、俺達はよく俺のおじいちゃんの家の近くで遊んでいたんだけども。その時、おじいちゃんが口を酸っぱくして言うのがそれだったのだ。 『クラヤミ洞窟には近づくな』  クラヤミ洞窟。  本当にそんな名前なわけじゃない。あくまで、地元の人が勝手にそう呼んでただけだ。とある神社の境内に、小さな洞穴のような場所があって、そこにクラヤミ洞窟なんて名前を暫定的につけていたのである。神主さんみたいな人に会うことも滅多にない、小さな小さな神社だった。何をお祀りしていたのかも俺は知らない。ただ、最近人が少ないのをいいことに、境内で鬼ごっことかをして遊ぶ子供が増えていたのは事実である。 『というより、あの神社であんまり騒ぐな。ご近所さんにも迷惑になるからな』 『えええ、あそこ隠れんぼするのにも丁度いいのに』 『駄目だ駄目だ、隠れんぼなんて論外だ!』  俺よりも、チハルちゃんの方が口を尖らせていた。そんなチハルちゃんに、いつもは温厚なおじいちゃんが厳しい声で言い募ったのである。 『とにかく、あの神社にもクラヤミ洞窟にも近づくな、入るな。何か起きてからでは遅いんだからな!』
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