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「そもそも何でこんな田舎に引っ越したのよ!木と草と虫ばっかで不便じゃない!何にもないし!ここまで来るのもどれだけ大変だったか!」
グチグチとまさかのところまで文句を言われて更に俺は黙り込む。
駅まで迎えに行ってやったし、引っ越しだって俺と妻で話したことであって、迷惑をかけたわけではない。
そもそも結婚してから娘はほぼ前の家にも帰って来なかったくせに。
久々に顔を見せて言うセリフにもう呆れた。
これでは離婚されても仕方ないか、と思いつつ、いや、離婚してこの家に住まれたらたまったもんじゃない!と思い直して、何とかならないかと妻の方に視線を送る。
それには気付かない妻は風呂上がりの孫たちの髪をといてやりながら嬉しそうに目元を緩めていた。
幸せそうなその顔を思わず見つめてしまう。
娘の愚痴はうるさいが、孫たちの笑顔と妻の穏やかな顔を見たら何も言えなかった。
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