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お迎え
外で音がした気がして、布団から体を起こす。
まだ薄暗い庭に軽自動車が増えていて、俺は側にあったちゃんちゃんこを羽織った。
ギシギシ鳴る廊下を一応気をつけながら歩いて、裸足のまま靴を履いて玄関の引き戸を開ける。
ヘッドライトは消えているが、車の中にあった人影はパッと顔を上げると転げるように車から飛び出してきた。
「お義父さんっ!!すいませんっ!!紗里と子供たち居ますよね!?」
俺にしがみついてくるような必死さに小さく息を吐く。
俺が吐いた白い息は薄暗がりの中に消えていった。
「あぁ。裕太くん、寒いし……みんなはまだ寝てるから。車、お邪魔していいか?」
「はいっ!!」
弾かれたように直立してから裕太くんは走って助手席のドアを開けてくれる。
「悪いね」
その肩を軽く叩いて俺は車に乗り込んだ。
ドアを閉めて、裕太くんも運転席に回ってきて座るとすぐに体ごとこっちを見る。
「本当にご心配とご迷惑をおかけしてすいません!でも、色々誤解で……」
「裕太くん、わかってるよ。ごめんな。紗里が聞かなかったんだろう?」
狭い軽自動車の中で更に縮こまって頭を下げる裕太くんの体を起こしてやった。
「我儘娘だからな。苦労かけるね」
涙で潤んだ目を見て申し訳なく思うと、裕太くんはフルフルと首を横に振る。
俺たちは辺りが明るくなるまでゆっくり時間をかけて色んな話をした。
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