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妻が起き出して小屋に卵がないか覗きに来たのを見て、俺は車から降りる。
今度は裕太くんが座る運転席のドアを開けてやると、裕太くんはそろりと降りてきてまた深々と頭を下げた。
「あら、お父さん、居ないと思ったら!しかも、裕太くんまで!おはよう!いつ来てたのー?」
妻が卵を三つ手にして小走りしてきて、俺はそれを受け取ってやる。
裕太くんはまた「ご迷惑おかけして……」と俯いた。
「まぁ、寒いから上がりなさい!話はそれから……ね?」
妻が裕太くんの背に手を添えて歩いて行くのを見ながら俺もその後に続く。
まだ娘と孫たちは起きてきていないらしく静かな居間。
そこで正座をして縮こまっている裕太くんを見つめた。
「ほら!温かいお茶ね!もうそんなとこ居ないでこたつに入りなさいよ!すぐ朝ごはんだから!まずはみんなで食べましょう?ね?」
母さんからの視線を感じて、俺も裕太くんをこたつに誘う。
「冷えるだろう?入って暖まればいい」
それでも裕太くんは動かない。
「……本当に浮気をしていたのか?」
「まさかっ!!」
聞いてみると、裕太くんはパッと顔を上げる。
「なら、入りなさい。堂々としていればいいよ」
それでも裕太くんは少しこたつに近づいただけて正座をしたまま縮こまっていた。
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