38. 曰く付き、呪術師?!

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「ほれ、ほれ!源十郎もお嬢ちゃんもボサっと突っ立ってないで取り敢えずお座り。話しの大体の大筋は使用人達から聞いてるが、一応源十郎の口からこれまでの経緯を聞かせて貰おうかのう。」 ザザッ  小柄な体躯には似つかわしくない木製の頑丈そうな椅子を引き寄せる。  萌と橘も同じような椅子に腰掛けた。  すると、さっきまでのおちゃらけた態度は何処へやら、橘が今回の一連の事件について語り始めようとすると。 「それで、あの兄貴のパンダが昔いろいろ悪さしてた辺りから話してくれるかい?」  その橘の姉と名乗る女性はグイッとその小柄な身を乗り出してきた。  橘が発する言葉一字一句聞き逃すまい、という意気込みが嫌でも伝わってくる。  真剣な眼差しを橘に向け、時折深く頷きながら橘のセリフに耳を傾けている。  だが。  傍らに座る萌には退屈な内容であった。  自分や叔父である原田、加えてお店のスタッフ達が体験してきたことでもあり、今更聞く必要もなかった。  寧ろ、目の前にいるこの橘の姉だと名乗る女性の、その到底理解不能な若さに興味が向いていた。いや萌でなくとも誰もが驚愕するであろう自然の摂理を超えた尋常でない程の若さ。  なっ、い、いったいどうなってんのよ!!どう見たって二十代前半って感じよ!ぜった〜〜〜〜〜〜い、あり得ないわよ!!  心の声は今にも飛び出しそうだ。  透明感のある艶やかな肌、髪。化粧っ気など殆どないにも関わらず思わず見惚れてしまう程の、いわゆるピチピチの肌なのだ。男は無論、同性からも視線を独り占めしてしまうほどの艶やかさ誇っている。  萌はいつの間にか、その女性に対して嫉妬や羨望の念すら湧き起こっていた。  だが、そんな萌の心情の変化などお構いなしに橘が語るストーリーは時系列通りに滞りなく進んでいた。 ーーーーーそして。  二代目パンダ、リャオハンのパフォーマンス中の事故について触れた時だった。 「ちょっと待って、源十郎。もう一度言ってくれるかい?」  
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