1 還って来た!!リャオロン!?

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1 還って来た!!リャオロン!?

 ガチャッ ギイィ〜〜。  少し申し訳なさそうに、開くドア。 「ふう〜〜、ったく、ようやく解放されたぜ。何でこの俺がこんな病院に現れたかって、当然お前の見舞いに来たに決まってるじゃねえか、なあ、リャオハンよ! どうだ、退屈過ぎて今にも死にそうって顔してるなあ! あははははは————————!!」  ゆっくりと近づいて行くその巨体は特注サイズのベッドをも覆い尽くさんばかりに、そのシルエットを見せつける。    その特大サイズのベッドに横たわる持ち主が、窮屈そうに身を捩りながら一言発した。その声には、驚きとも戸惑いとも言いかねる感情が入り混じっている。 「に、兄さん……。久しぶりだね。元気してたかい? こんな無様な姿で会うことになるとは……。我ながら情け無いよ。あはぁぁぁぁ……。」 「まあ、いいってことよ。ちょっとばかし無理し過ぎたんだろう? ちょうどいい休養期間になったじゃねえか。まあ、お前がこうやって怪我しちまって、ブー太郎一人じゃあ心細いんだろうよ。やはりお前が早く怪我を治して復帰しないことにはな!俺の情報網を侮るなよ、今まで、お前とブー太郎と二人であのアウトレットでのパフォーマンスを盛り上げてくれていたのは、ちゃんと知ってたぜ。ありがとうな。あはははっ!!」  その豪快極まりない肉声と声量が、VIP待遇のかなりの広さを有した個室に響き渡る。  だが、何処か神妙な面持ちのリャオハンは、一言一言慎重に言葉を選びながら口にした。  「兄さんは知ってたんだね。僕たちのパフォーマンスのことを。確かに僕たちのパフォーマンスを見たいが為に、連日沢山のお客様たちがアウトレットを訪れてくれて……。毎日、大盛況だったよ。とてもやり甲斐もあったしね。 ………、でも、もうそれは過去の出来事になってしまったんだ……。 一ヶ月前までは、そんな大盛況の日々が続いていたんだ……。 で、でも、あの日、あの時から状況は一変してしまった……、歯車は狂い始めてしまったんだ、僕らでは止めようがない程に………。 くっ、うっ、うぅぅぅぅ……。」  リャオハンが背中を丸め、嗚咽し始めた。兄、リャオロンには劣るもののその通常のパンダよりは一回り大きい体躯が、今は何故だか小さく見える。  「お、おい、どうしたってたんだ、リャオハンよ。いったい、俺がいない間に何があった?」  先ほどまでの太々しい表情は消え失せたリャオロン。純粋に弟の苦悩に心を寄せる弟想いの優しい兄の表情になっていた。そこからは、以前アウトレット内で悪事を働いていた頃の狡猾さや残忍さは微塵も見られなかった。
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