序幕

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序幕

 ザッ ザッ ザッ ザザザザザーーーー!!  ズル、ズルズルズルズルーーーーー。   「この砂利道、歩き難いなあ〜〜。マジで足裏痛いし、怪我しちまうぜ。おまけにせっかくの一番気に入ってるコートも裾が砂利のせいでボロボロになっっちまうじゃねえか。 ここか〜〜、アイツが入院してる病院ってのは。全く、とんだドジしやがって、この俺と同等のパフォーマンスを披露しようってのがそもそも無理な話ってもんだ。」  その足音の主が立ち止まると、自動ドアが音もなく静かに開いた。   ゴツッ!!   「いっ、痛ってえええええええ〜〜〜〜!! ったく、ドア、もうちょっと高く設計しとけよな! 低すぎんだろうが!!」  そのドスの効いた罵声に、病院の待合室で順番待ちをしている患者、ほぼ全員が入り口の方を振り向いた。  その想像だにしない巨体に、あちこちから悲鳴が上がる。  母親にしがみ付き狂ったように泣き出す子ども、足腰もままならなず腰を抜かしてその場にへたり込む老夫婦、その信じ難いほどに巨体を食い入るように見つめる制服姿がまだ新鮮味を残している女子高生、などなど。  看護師たちは、大慌てで忙しなく駆けずり回っている。  「ちょ、ちょっと早く院長を呼んできて!それから、誰か、警察、警察にも連絡して!!」  この病院では最も年長と思しき看護師が金切り声を発している。  と、其処へ。  恰幅のいい初老の男性が、小走りで駆け寄って来る。 「き、君は………。た、確か………。な、何で、今になって……。」 この騒ぎの原因となっているその巨体の持ち主を見るや否や、言葉を絞り出した。
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