紺碧の中で

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(少し重い……)  海に潜るためには、鉛のウェイトを腰と足首に装着するのだが、今日の歩美のウェイトは普段より4キロ重い。沈まぬように、いつもより細心の注意を払いながら呼吸をし、浮力をとった。  この浮きも沈みもしない浮遊感、無重力感は格別である。言うなれば、紺碧の空を飛んでいる感覚で、地上ではなかなか味わえない。  雅史が歩美より少し前に進み、両手を広げストップの合図をした。歩美は首を傾げながらも、泳ぐのをやめ、傍にあった岩に掴まる。  海底の砂場に着地した雅史は、右手でおいでおいでと歩美を呼ぶ。雅史の隣に両膝をつき、歩美は筆談用の水中ノートにプラスチックでできた鉛筆でサラサラ文字を書いた。 『どうしたの?』  雅史はノートの内容を読み、鉛筆を手に取る。 『ちょっと、ここでまってて』  ニコニコしながら、近くにあった岩の裏に泳いでいってしまった雅史を目で追ったあと、不思議に思いながらも、歩美はキョロキョロと目の前の魚を見ていた。  
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