紺碧の中で

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 ふと気がつくと、周りに人影が全くない。  背中にゾクリと冷たいものが走った。  だだっ広い海に取り残された感覚。さっきまで優しかった景色が一気に冷酷な顔に変わる。 (1人だと海って、こんなに怖いのね……)  シィボコボコボコボコボコ…………  呼吸音が早まり、緊張のせいか心音がドッドッドッと鳴り響く。 (落ち着いて。大丈夫よ。何度もシミュレーションはしたのだから)  自分に言い聞かせながら、ざわついた心を沈める為、海面を見上げる。さっきのポイントより遠く感じた海面に、ダイブコンピューターをチラリと見ると18の数字が表示されていた。 (18メートル……気が付かなかった)  歩美はぐるりと見渡した。  すぐ傍はドロップオフになっている。海の断崖だ。ドロップオフに沿って泳ぐのは、より浮遊感を味わえ、ダイバーに人気のポイントである。  今日の歩美のように、多めにつけているウェイトでは、かなり浮力を確保しなくてはいけないけれど。 (なるほど……ね)  歩美は断崖を見つめる。  海底まで、いったい、どれくらいの水深なのだろうか……?
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