T1.休日の双子ちゃん

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 ユキの叫び声にリビングを覗く。姿は見えない。 「……ユキ?」 「きてきて!」  キッチンの端の壁からひょっこり顔を出して、ユキはボウルを指さし手招きをする。ベランダ用のスリッパを脱いで上がれば、ボウルの中には卵がふたつ入っている。 「これが、なに?」 「もうニブチンだな、双子だよ双子!」  ああ、と納得した。妙に黄身(きみ)がくっついているなと思った。 「すごくない? ねね、すごくない?」 「初めてみたわ」 「そうなの、すごいよね」  ユキは興奮して語彙力が落ちている。 「崩しちゃうのもったいないからさ、やっぱカルボナーラやめてスゴモリにしない?」 「いいね、ユキにまかせるよ」 「やった!」  音符が出るように菜箸を振って、ユキはキャベツを野菜室から取り出し再びまな板へ向う。ベランダへ戻り洗濯を続けながら様子をうかがうと、後ろ姿でもご機嫌なのが伝わってきた。  ジューッと卵が焼け、さっと蓋をされて音がしぼむ。ユキは不器用そうだけど慣れれば手際がいいから、料理はもう任せられそうだ。最後のタオルを洗濯ばさみで留めて首だけ振り返ると、鍋から湯気が沸いている。そろそろできあがる頃だろうか。
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