Y1.甘やかし上手

4/5
前へ
/53ページ
次へ
「はい、お待たせ」  コト、と置かれたマグカップは色違い。荷解きしたとき同じのがあって笑ったっけ。有名なホームセンターはシンプルでおしゃれだけど被ることも多いよねって。 「ユキ? 食べないならもらっちゃうよ」 「な! 食べますう」  たかみんに顔を覗きながら揶揄(からか)われる。 「じゃあ手を……」 「いただきますっ」 「あ、こら」  なんだよ、ユキだってむっとすることくらいあるもん。むっと。ユキ、何にイラッとしたんだろう。 「ん!」 「どう?」 「さっぱりだ!」 「おいしい?」  言いながらたかみんは自分のうどんを啜る。 「うん。冷たいのにかつお節と絞ったすだちのお陰で出汁が香ってくるし……薬味がね、味をしめてくれてる! ミョウガのピリッとしたところは大根おろしとシソが和らげてて、食感も変化があっておいしいよ」 「ふうん」 「え、なに?」 「いや、ユキはどこがおいしいのかちゃんと教えてくれるよね」 「えっと……」  真顔のたかみんに目が泳ぐ。ユキはただ、美味しさを伝えたいだけなんだけど。 「嬉しいよ」 「へ?」  ふ、とたかみんが口角をあげた。 「作りがいがある」 「そっ、れはよかったね」  ひゃー、不意打ちのスマイル。しかも最近よく見る柔らかいほう。思わず言葉が詰まってしまった。 「さ、早く食べて寝よう」 「うん。あ、ユキお風呂入らなきゃだ」  たかみんを真似るつもりでにっこり頷いたけど、きっとぎこちなかっただろうな。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加