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「はい、お待たせ」
コト、と置かれたマグカップは色違い。荷解きしたとき同じのがあって笑ったっけ。有名なホームセンターはシンプルでおしゃれだけど被ることも多いよねって。
「ユキ? 食べないならもらっちゃうよ」
「な! 食べますう」
たかみんに顔を覗きながら揶揄われる。
「じゃあ手を……」
「いただきますっ」
「あ、こら」
なんだよ、ユキだってむっとすることくらいあるもん。むっと。ユキ、何にイラッとしたんだろう。
「ん!」
「どう?」
「さっぱりだ!」
「おいしい?」
言いながらたかみんは自分のうどんを啜る。
「うん。冷たいのにかつお節と絞ったすだちのお陰で出汁が香ってくるし……薬味がね、味をしめてくれてる! ミョウガのピリッとしたところは大根おろしとシソが和らげてて、食感も変化があっておいしいよ」
「ふうん」
「え、なに?」
「いや、ユキはどこがおいしいのかちゃんと教えてくれるよね」
「えっと……」
真顔のたかみんに目が泳ぐ。ユキはただ、美味しさを伝えたいだけなんだけど。
「嬉しいよ」
「へ?」
ふ、とたかみんが口角をあげた。
「作りがいがある」
「そっ、れはよかったね」
ひゃー、不意打ちのスマイル。しかも最近よく見る柔らかいほう。思わず言葉が詰まってしまった。
「さ、早く食べて寝よう」
「うん。あ、ユキお風呂入らなきゃだ」
たかみんを真似るつもりでにっこり頷いたけど、きっとぎこちなかっただろうな。
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