3人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「たかみん出たよ」
「ん、寝る?」
お風呂からあがるとリビングはダウンライトに、たかみんはソファベッドに横になっていた。
「起こしちゃった?」
「ううん、ユキが来るの待ってた」
「そう」
冷蔵庫へ向かおうとすると麦茶のグラスが目に入る。
「ねえこれ」
「飲んでいいよ」
寝転んだままのたかみんは言葉が足りないけど、きっとユキのために用意してくれたんだ。
「……こんなことまで」
「なにか言った?」
「ううん! ありがとう」
クッと一気に麦茶を飲み干して、おやすみの挨拶を交わしリビングをあとにする。
お風呂、洗ってはあったけど絶対入ってないよね、たかみん。でもシャンプーの香りはしたし。いつもと違う匂いだったけど。部屋に入っても電気は点けずにドアを閉める。
「はあ」
知らないことが多すぎるよ。
目を閉じて10秒数える。そうすると暗くてもうっすら見えてくる。寝室にはベッドがひとつ、クローゼット、それに窓。
――この部屋は明日からユキが使っていいよ。
「……甘やかしすぎ」
ユキはそのままベッドにごろんとした。あーあ、たかみんへのモヤモヤも料理みたいに説明できればいいのに。そうしたらユキだってたかみんのこともっと。
「もっ、と」
重い瞼をくっつける。温かい波に揺られたような気がしてはっと目を開けると、もう窓からは朝日が射していた。
(Y1.甘やかし上手 完)
最初のコメントを投稿しよう!