Y1.甘やかし上手

5/5
前へ
/53ページ
次へ
* 「たかみん出たよ」 「ん、寝る?」  お風呂からあがるとリビングはダウンライトに、たかみんはソファベッドに横になっていた。 「起こしちゃった?」 「ううん、ユキが来るの待ってた」 「そう」  冷蔵庫へ向かおうとすると麦茶のグラスが目に入る。 「ねえこれ」 「飲んでいいよ」  寝転んだままのたかみんは言葉が足りないけど、きっとユキのために用意してくれたんだ。 「……こんなことまで」 「なにか言った?」 「ううん! ありがとう」  クッと一気に麦茶を飲み干して、おやすみの挨拶を交わしリビングをあとにする。 お風呂、洗ってはあったけど絶対入ってないよね、たかみん。でもシャンプーの香りはしたし。いつもと違う匂いだったけど。部屋に入っても電気は点けずにドアを閉める。 「はあ」  知らないことが多すぎるよ。  目を閉じて10秒数える。そうすると暗くてもうっすら見えてくる。寝室にはベッドがひとつ、クローゼット、それに窓。  ――この部屋は明日からユキが使っていいよ。 「……甘やかしすぎ」  ユキはそのままベッドにごろんとした。あーあ、たかみんへのモヤモヤも料理みたいに説明できればいいのに。そうしたらユキだってたかみんのこともっと。 「もっ、と」  重い(まぶた)をくっつける。温かい波に揺られたような気がしてはっと目を開けると、もう窓からは朝日が射していた。 (Y1.甘やかし上手 完)
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加