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海水をガブリと飲む。
塩辛さに喉がひりつく。
息ができなくて苦しい。
必死になって水面に顔を出すと、一瞬、稲妻が光るのが見えた。
そこで記憶が途絶えている。
「どうしよう……ここはどこなの?」
ヴィオラの瞳に、みるみる涙があふれてくる。
「お父さん、お母さん……」
船に乗り合わせた乗客や、渡し守の船員もいたはずだ。
みんな、どこにいっちゃったんだろう。
ヴィオラは、浜辺をフラフラとさまよい歩いた。
もしかして……みんな……。
恐ろしい想像が胸をもたげ、ヴィオラは自分自身を抱きしめた。
「悪いほうに考えちゃいけないよね」
気持ちを奮い立たせるように、声に出してつぶやいてみる。
「きっとみんな、私のこと探しているに決まっている!」
ここでこうして泣いていても仕方がない。
しっかりしなくちゃ。
浜辺の向こうに、塔があるのが見える。
きっと町があるのだろう。
町に行けば、両親と兄に再会できるかもしれない。
うん、きっとそうだ!
ヴィオラはひとりうなずくと、町に向かって歩き出した。
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