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イリリア救貧院
言われた通り南東に向かう。
民家の建ち並ぶ道をしばらく進むと、教会が見えてきた。
教会は、思いのほかこじんまりとしている。
その扉を押し開けようとしたとき、後ろから「こんにちは」と声をかけられた。
振り向くと、白いウィンプルで頭を包んだ、教会のシスターが、微笑を浮かべて立っている。
「お祈りにきてくださったのね?」
ヴィオラの母親と同年代くらいだろう。
シスターの優しい声音に、ヴィオラはホッとしてうなずいた。
「あの、私……」
事情を話そうとしたとたん、盛大におなかの虫が鳴った。
「まあ」
シスターが、くすりと笑った。
「どうぞ、こちらにいらっしゃい」
シスターのあとについて、礼拝堂の裏手、質素な石造りの建物の中に入っていく。
ヴィオラは、そこで水と食事を与えられた。
「お祈りをしてから召し上がってね」
「はい」
ヴィオラは感謝の祈りをささげてから食事をして、これまでのいきさつを話した。
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